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モンゴルの風に吹かれて①

NPO法人アジアンロード理事長 宮秋道男


 日も暮れようとしていた。「夕陽がきれい」と興奮しているのは、子どもたちだけだ。
大人たちは、このままどうなるんだろうかと、心配で心配で立ちすくんでいた。

場所は、中国・内モンゴルの草原の中。北京から東北・八○○キロのところにシリンホトがあるが、そこから北へ更に二時間以上も車で走っていって、立ち往生してしまったのだ。

あたりは何もない。見渡す限り、草と砂。私たちの乗る車が立ち往生としたのも、砂でタイヤが取られてしまったからだ。 車から降り、大きな荷物も下ろし、大人たちが力の限り押したが、ゼンゼンびくともしない。深刻だった。 野宿ですめばいいが、そのままになってしまうとどうなるか。それこそ心配であった。

私たちは、サバイバルのツアーではない。 NPO法人アジアンロードが主催する「夏の風 内モンゴルの草原で」交流プログラムで参加した。 草原でのモンゴルの移動式住居・ゲルでの生活や放牧・乳製品づくりの手伝いなどを行い、牧民の子弟へ奨学金贈呈などのためにやってきた。


あれから、七年。今年も、七月の末、私たち一行は、草原でひと時を過ごした。 今年も再び、車は立ち往生したが、すぐさま応援を頼むことができた。携帯電話で、である(相手も電話があるということ)。

ものの二十分ぐらいだったか、十人ほどの男たちが乗ったジープがやってきて、そのジープで引っ張ってもらった。


モンゴルが変わりつつある。砂漠化という現象(注)もそうだが、人びとの暮らしもどんどんと変わってきた。 この七年ほどの経過の中でも、その変化にびっくりするぐらいだ。 私たち日本人が、たまにしか行かない私たちが、モンゴルの草原で感じたことを、しばらく綴ってみたいと思う。


後日談だが、最初の年の立ち往生の際、近くに住んでいる方たちに発見され、私たちは助け出された。日もとっぷりと暮れていた。

(注)砂漠化は急速に進んでいる。すでに中国では国土の四分の一が砂漠やそれに近い状態となり、年間約三千四百平方キロ余が砂漠化しつつあるという。奈良や鳥取県と同様の面積である。